二年生の終わり、私は居場所を失った。
担任の先生は私が登校するのをわざわざ待ち伏せしていたようだ。ついこの前までは私を見かける度しつこいくらい声を掛けていた先生が、挨拶もそこそこに恐い顔でついて来いと命令する。職員室に着くと一枚の紙が投げつける様に渡されて、全てを察した。
「四月からE組行きだ。生駒」
きっとそうなるだろうなと予測していたからか、別段ショックは受けなかった。なんのリアクションもなくぼんやりとその紙を見つめる私に先生が舌打ちをする。
「お前は優秀だったのに。残念だ」
イライラと吐き出されたその言葉に対しても私は無言のままで。先生は舌打ちを繰り返した。
「教室にある荷物を纏めてさっさと旧校舎へ移動しろ」
「……はい」
「せいぜいE組で頑張ることだな」
心にもない言葉と共に浮かべられた笑みには、嘲笑の色が含まれていた。ぺこりと一礼して職員室を出る。教室へ行く途中もあちこちから視線を感じ、ひそひそ話す声が耳に入ってきた。ちらりと目を向けると、声の主は一瞬気まずそうに顔を伏せる。しかしすぐにキッと顔をあげ、先程の先生のように嘲る表情を向けてきた。
それは教室に入ってからも同じだった。がらりと扉を開くと、みんなあからさまにおしゃべりを止めて静かになった。それを無視して机の中のものをまとめていると、ひそひそ話が始まる。それから、やはり嘲るような笑い声が加えられた。その中には私の友達――少なくとも私は友達だと思っていた子の声も。これがE組行きになった人達が受ける最初の制裁か。今までは私をやたらと持ち上げて、気持ち悪いくらいちやほやしていたというのに。みんな変わり身早いなあ、と他人事のようにぼんやり思った。
私の席のすぐ傍では、浅野くん、榊原くん、瀬尾くん、荒木くん、小山くん……この学園の成績上位者で『五英傑』と呼ばれるみんなが無言で私の様子を窺っていた。他のクラスメイト達と違うのは、浅野くん除く四人が心配そうな表情で何か言いたげにしているってところ。浅野くんは無表情だからわからない。一番近くにいた榊原くんが、こちらに手を伸ばして口を開きかけた。だけど私はそれに気づかない振りをして、荷物を持って教室を出た。
エンドのE組行きになったわけだけど、不思議と絶望感は湧かなかった。むしろ何かが起きるような、妙な期待が膨らんでいたんだ。
「んーっ、いいお天気だなぁ……」
二年生の終わり、私は居場所を失った。
だけどそんなのはこの本校舎だけでの話。
もう二度と戻らないであろう校舎を後にした私の心は、驚くくらい晴れやかだった。