序章2

 来年度からのE組行きを言い渡されてから、二年生の残りの期間は自宅謹慎を命じられていた。残り期間と言っても二週間くらいだけど。謹慎かあ……一連の件から考えて、私のこの処分は妥当なのかな。退学にならなくてよかったと思うべきなのかな。というかそれよりも、私だけが処分を受けることになったのがやっぱりちょっとだけ納得いかない。それについて抗議したって、もうどうしようもない雰囲気だったけど。
 でも今更A組にはいたくないし、すでに新しいメンバーで始まっているE組にもこんな中途半端な時期にはなんだか行きにくいし。気持ちを落ち着けるためにも自宅謹慎でよかったのかもね。

「とはいえ、暇だなー…」

 この二週間ほどを私はしっかり自宅で大人しくしていた。学校が放課後になるまで外に出るわけにはいかないし、そもそもあまり外出する気分にはなれなかったから。だから、だいたいは勉強をしたり読書をしたり、時々お菓子作りなんかをして過ごしていた。それにも二週間も経てば飽きてくる。
 ケータイは静かなものだった。これまでに連絡をくれた本校舎の友達と言えば、五英傑のみんなくらい。アドレス帳には結構な数が入っていたのだけど、きっとほとんどの人がすぐに私の連絡先を消しただろうなあ。希薄な友人関係だったな、なんて思いながらもさほど悲しくはならなかった。強がってるとかじゃ、なくって。


、菅谷君が遊びに来てくれたわよ」
「えっ、菅谷?」

 退屈だろうとお母さんが買ってきてくれた本に没頭していると、コンコンと部屋のドアがノックされた。突然の来訪者に驚きながら、慌てて寝転んでいたベッドから起き上がる。あれ、いつの間に放課後の時間になってたの……。ドアを開けると学校帰りの菅谷が「よっ」と軽く片手を挙げる。

「あ、ひ、久しぶり……。急に来るからびっくりしたよ。連絡してくれたらよかったのに」
「そろそろ暇してんじゃねーかと思ってさ。悪い悪い」

 菅谷は一年生の時に知り合った男の子だ。同じクラスになったことは一度もなかったんだけど、ひょんなことから出会ってよく話すようになった。話とか趣味とかが結構合って、たぶん私の一番仲良しな男の子なんじゃないかなって思ってる。ともあれ中へと招くと、菅谷は適当な場所に座って「なに読んでたんだ?」とベッドに置いたままの本を取り上げる。少しして、お母さんが紅茶とお菓子を運んで来てくれた。

「本当はもうちょい早く顔見に来よーと思ったんだけどさ。ごめんな」
「いいよ。菅谷も忙しかったんでしょ」
「まあ……な」

 菅谷は私より早い内にE組行きが決まっていた。3月の初めごろからE組のメンバーは入れ替わることになっているので、もうすでに旧校舎への登校が始まっている。自分の周りがごたごたしていたからとはいえ、顔を見に行くのが遅くなったのは私も同じだ。連絡もあまりできなくてごめんねと謝ると、菅谷は「が謝ることじゃねーだろ」と肩を竦めて苦笑した。

「それにしても、もE組か」
「初めて同じクラスだね」
「だな。まさかあそこで同じクラスになるなんてなあ」

 菅谷はどことなく嬉しそうに笑って紅茶のカップに手を伸ばした。私はお母さんが持って来てくれたクッキーをひとつ摘まむ。それで、E組行きと言われてから気になっていたことを思い出した。

「ね、E組ってどんな感じ?私、ちゃんと友達できるかな」
「おう、結構良さそーだぜ。大丈夫だって」
「そっかあ」
「あーあと、にとってすっげー嬉しいクラスだから」
「??」

 そう言って菅谷は私の頭をポンポン叩いた。私にとってすごい嬉しいクラスってどういうことだろう……。詳しく教えてと頼んでも「行ってみてからのお楽しみ」とはぐらかされた。なんだろう……?気になる。

「そんでさ、明日でもう三学期も終わっけど、放課後E組来てみねー?」
「明日?……いいのかな」
「俺らもちょうど今日、が4月からE組来ること聞いたし、一回くらい顔合わせといた方が良いだろ?」
「うん……」

 確かに、四月になる前に一度は行ってみとくべきかな……?担任の先生にも、これからお世話になるからご挨拶しておきたいもんね。クラスメイトがどんな人達かちょっぴり不安だけど、「良さそう」と言う菅谷の意見を信じてみよう。

「じゃあ、明日学校が終わるくらいの時間に旧校舎行くね」
「おう。みんなにも伝えとく」
「……菅谷、あの、ちょっと不安だから一緒にいてね……?」
「わかってるわかってる」