「というわけで!廃棄される卵を救済し、なおかつ暗殺もできるプランを考えました!」
意外な人の個性的で面白い暗殺計画だと思った。
三連休の前日にカエデちゃんからE組全員に連絡が渡った。『最高の暗殺プランが出来たから集まって欲しい』と。もともと連休中も学校で暗殺について話し合ったり訓練をする予定だったので、当日には全員が集まった。そしてカエデちゃんの考えた計画が説明されたのだけど……。
「た、卵を暗殺に?」
「ケ。メシ作ってコレ混ぜるつもりか?」
その内容はいまいちピンとこず、みんなの頭には疑問符が浮かぶ。寺坂くんの言うように、食べ物に対先生弾を混ぜて渡すっていうのは既にやったことあるけど失敗してるから。殺せんせーったら器用に弾だけ取り除いちゃうんだよね。だけどカエデちゃんは「もう少し考えてるのだ」と自信たっぷりに笑う。そしてもう下準備は出来ているからと、私達に校庭へ出るように言った。
「ぬおっ!?」
「い、いつの間に……?」
登校した時には何もなかったはずの校庭に、いつの間にか大きな円錐台の透明の容器が設置されていた。なんだかすごく見覚えのある形だ。それに、廃棄される予定の大量の卵を使用するということは……まさか?
「今から皆で巨大プリンを作りたいと思います。名付けて、プリン爆殺計画!!」
カエデちゃんは目をきらんっと輝かせて発表した。や、やっぱり!どうやら以前殺せんせーと一緒にプリンを食べていた時、先生が「いつか自分より大きいプリンに飛び込んでみたい」と話したそうだ。その願いを叶え、なおかつ暗殺のために底の方へ対先生弾と爆薬を仕込んでおくと。
「…やってみる価値あるかもな」
「殺せんせー、エロとスウィーツには我を失うとこあるもんな」
独特で面白い計画だ。初めはちょっと戸惑ったけれど、私達はカエデちゃんの指示の元このプリン爆殺計画をやってみることにした。
作業は烏間先生が手配してくれた業者の方の力も借りながら、修学旅行の時の班に別れてそれぞれ行っていく。作るのが巨大プリンだからその重さだとか、九月のこの暑さだとか心配な点はあったけど、それらは全てカエデちゃんが対策方法を説明してくれた。それだけでなく、味に飽きないように変化を付ける工夫も考えていた。
「すごいな茅野……」
「うん。カエデちゃんって本当にプリン大好きなんだね」
私達二班の流し込みの作業が終わった後、積極的に指示を出すカエデちゃんを眺めながら菅谷とそんなことを言い合った。本当にすごいよ。ただ好きなだけじゃなくって、楽しくて暗殺にも使えることを考えちゃうだなんて。
「――そうと決めたら一直線になっちゃうんだ…私」
カルマくんと話していたカエデちゃんは、そう言って少し照れ臭そうに笑った。
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次の日もプリン作りの続きだ。一晩冷やしたプリンの型枠をいよいよ外し、手分けして肌をゼラチン寒天で滑らかに整える。そして大事なカラメルソースをかけて表面をあぶり……
「できたぁーーー!!」
「やべ〜超うまそ」
「あの下に爆弾がある事忘れちゃうね」
ついに巨大プリンが完成した!あんなに大きいプリン、甘い物が好きなら誰もが一度は夢見るんじゃないかな?それが自分達の手で実現できるだなんて。あちこちから「おいしそう」との声が上がり、写真を撮る音が響いた。一通り眺めてお互い労い合った後は、いよいよ暗殺本番。暗殺のことは伏せて殺せんせーを呼び出す。やって来た先生は巨大プリンをひと目見た途端に涎を垂らして目を輝かせた。
「……こ、これ全部先生が食べていいんですか?」
「どーぞー。廃棄卵を救いたかっただけだから」
「もったいないから全部食べてね〜」
「もちろん!!ああ夢がかなった!」
感激の涙を流しながら巨大プリンに飛び込んでいく殺せんせーを一人残し、私達は教室に戻る。何人かには廊下で壁役をしてもらい、教室内では竹林くんが起爆のタイミングを計るのを見守る。殺せんせーはすごい勢いでプリンを食べていく。爆弾をセットした底へ底へと進み、真っ暗な画面に光が映った瞬間が起爆の時!
「ダメだーー!!」
突然廊下からカエデちゃんの叫び声が聞こえた。ど、どうし…「愛情こめて作ったプリンを爆破なんてダメだー!!」……ああ、うん。大好きなプリンを頑張って作ったもんね……。寺坂くんに抑えられるカエデちゃんに苦笑したりツッコミを入れたりしていると、「ちょっと休憩」と殺せんせーが教室に入って来た。
「えっ…」
「異物混入を嗅ぎ取ったのでねぇ。土を食べて地中に潜って外してきました」
その手には設置していた筈の爆弾が。カエデちゃんの方に気を取られている間に爆弾の存在に気づかれ外されてしまっていたようだ。
「プラスチック爆弾の材料には強めの匂いを放つものもある。竹林君、先生の鼻にかからない成分も研究してみて下さい」
「……っ…はい」
いつも通りアドバイスをする殺せんせーに竹林くんは悔しそうに返事をする。そっか、匂いにも気を付けなきゃいけないか。殺せんせー、鼻が利くもんね。忘れないようにメモを取っていると有希子ちゃんと目が合って、「残念だったね」というように苦笑した。
「そしてプリンは皆で食べるものですよ。きれいな部分をより分けておきました」
「わーっ!」
「ありがと、殺せんせー」
「生駒さん、はい」
「ありがとう三村くん」
殺せんせーはいつの間にやらクラス全員分に残ったプリンを分けていた。次の公民の授業の予告と共にみんなに回される。一番嬉しそうな顔をしているのはやっぱりカエデちゃんだった。
「惜しかったね、プリン爆殺計画。もしかしてとは思ったけど」
「な。それにしても茅野の案、面白かったな」
「ふふ、今度は菅谷が何か提案してみたら?」
「俺が?そーだなー…」
好きなものをひたすら極めて、例えがそれがプリンであってもE組では立派な暗殺計画。これだから殺せんせーでなくともE組での暗殺では楽しい。
そんな殺せんせーは、カエデちゃんに「よくできました」の笑顔と触手で作った○印を向けていた。